Naomi scott: 音楽への情熱が女優業を凌駕する、初のソロアルバム『f.i.g.』誕生秘話
ハリウッドを舞台に女優として活躍するNaomi Scott。しかし、彼女の心には常に音楽への情熱が宿っていた。プリンセス・ジャスミンの役を演じる一方で、幼い頃から教会で歌い、父親のWindows Media PlayerでJanet JacksonやKate Bushを発見した音楽的なルーツは、彼女の新たな才能開花の狼煙となる。
女優として成功を収めた先に待っていた、アイデンティティクライシス
14歳でKéllé Bryanにスカウトされ、作曲家Xenomaniaとのセッションに参加するなど、歌手になる道を志していたScott。しかし、いくつかのオーディションに参加したことがきっかけで、俳優としてのキャリアが軌道に乗り、その後の『アラジン』や『スマイル2』での成功は、多くの人々を魅了した。だが、彼女自身は「人生の転換期」を迎えていたのだ。ロンドンで自宅にこもり、ピアノに向かい、自らの音楽的アイデンティティを探求し始めた。
「私は常に変化し、成長し続ける存在だと感じていた。それが私のプロジェクトのモットーになった」とScottは語る。そして、その探求の末に生まれたのが、初のフルレングスアルバム『F.I.G.』だ。

R&b、ポップ、ソウル… 多彩なジャンルを融合させた、彼女自身の音楽的アイデンティティ
3月発売の『F.I.G.』は、R&B、オルタナティブ・ポップ、ソウル、ファンク、80年代のビートなど、様々なジャンルを巧みに融合させた作品となっている。Janet Jacksonのグルーヴィーな「Rhythm」、甘いレイヤーボーカルと情熱的なスピーチを織り交ぜた「Cherry」、Princeのギターリフとシンセサウンドが印象的な「Losing You」や「Gracie」など、彼女の洗練された音楽センスが光る。Solangeの楽曲に共通する繊細なボーカルワークも垣間見え、「Cut Me Loose」では、Solangeと親交のあるDev Hynesがプロデュースを手掛けている。
全29分というコンパクトなアルバムながら、彼女自身の音楽的アイデンティティを鮮明に打ち出す力強い作品に仕上がっている。アルバムタイトル「F.I.G.」は、「fall into grace(恵みへと落ちる)」の略であり、音楽活動に打ち込む中で得た自己受容の旅路と、シルヴィア・プラスの『理由なき恐怖』に登場するイチジクの木のメタファーを重ね合わせたものだ。

口コミで広がる支持、diy精神で作り上げた世界観
『F.I.G.』は、リリース当初は大きな話題を呼ぶことはなかったものの、その後、口コミを中心に徐々に支持を広げている。インディーズレーベルに所属しているため、大規模な資金やマーケティング投資はないものの、「音楽が自分の言葉で語り、正しい人々に届くと信じていた」と語るScottの自信が実を結んでいるのだ。
また、Katharina Korbjuhnとの共同制作によるミュージックビデオは、生々しいリアリティとDIY精神が光る作品となっている。「お金は創造性を高めるものではない。大切なのは、アイデアと情熱だ」とScottは強調する。「Cherry」のミュージックビデオでは、ヴィヴィアン・ウエストウッドのボタンアップシャツとグレーのスウェットパンツを身に着け、ソーカースピールで女性チームと共にダンスを繰り広げる姿を捉え、英国的な遊び心と包容力を表現している。
ライブパフォーマンスにもdiy精神を貫く
現在、米国でのヘッドラインツアーを終え、夏にはヨーロッパのフェスティバルにも出演予定。また、Jessie WareのUKアリーナツアーのサポートアクトとしても参加するScottは、ライブパフォーマンスにもDIY精神を貫く。「今の段階では、ギターとベース兼任のミュージシャン2人だけで十分だ」と語り、アルバムの雰囲気を損なわないように、アレンジや曲の変更は最小限に抑えるという。
New EditionのR&B名曲「Can You Stand the Rain」のカバーや、Scottの「Bound」とAnita Bakerの「Sweet Love」をマッシュアップした楽曲も披露する予定だ。「ライブパフォーマンスでは、少しサプライズを用意している」と、彼女は楽しげに語る。衣装にもこだわり、ステージ上でのチェンジを想定し、自身のワードローブや、お気に入りのブランドから借りてきたアイテムを組み合わせる。Naomi Scottは、常に変化し続ける「プロセス」そのものなのだ。
彼女のメッセージは明確だ。「私の音楽が、人々の心に届くことを願っている。そして、私自身も、この旅を楽しみ続けたい」と、Scottは笑顔を見せる。彼女の音楽は、まだ始まったばかりだ。
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